2008年10月25日土曜日

月の南極にあるクレーター内に水氷はなかった(「かぐや」より)

こんにちは。
月探査機「かぐや」からの新たな情報がありましたね。

「月の南極のクレーターには水氷がなかった」というものです。
http://sankei.jp.msn.com/science/science/081024/scn0810240818001-n1.htm

この関連のJAXAの記事を読んでみると、今回の地形カメラ(精度10m)で撮影されたシャックルトン・クレーターの内部が撮影されています。地形カメラは太陽光の一万分の一の明るさまで見えるということで、永久日陰のクレーターの内部まで詳細に写しだされています。

しかし、地形カメラの映像の中にある鉱物が何であるのかを判断する、SP(スペクトルプロファイラー)の精度は562m×400mの大きさの巨視的なものであるため、この範囲に存在している500m以下の小さな鉱物は判別が難しいと考えられます。(つまりこの範囲に有る鉱物が全体的に何であるのかを判断している。SP画像の1ドットの大きさと言っても良いと思われる。)
http://www.kaguya.jaxa.jp/ja/equipment/tc_j.htm  (SP:スペクトル・プロファイラーの説明)

結局、562m×400mの水氷の板があれば、水氷があったとSPにより確実に計測されるわけです。しかし今回測定されなかったのだから、この地域にもし水氷があったとしても、ごく小さな規模のものでしかないということになります。(全くないとは言っていない。)

(シャックルトンクレーター内には水氷はなかった。Jaxaページより)
http://www.jaxa.jp/press/2008/10/20081024_kaguya_j.html

(サイエンスに掲載された上記論文の要約)
http://www.sciencemag.org/cgi/content/abstract/1164020

結局、上記のJaxaの記事のなかにある、
『地形カメラによって得られたシャックルトンクレータの地形情報から、クレータ内部は90Kより低い極低温状態であることが示しています。このことは、水氷が存在していれば40億年でも数cmも昇華しないはずです。その一方で、地形カメラが映し出したシャックルトンクレータの内部には、水氷と見られる高い反射率の場所は存在しませんでした。このため、クレータ底部の表面付近には、水氷は露出した形で大量に存在する可能性はないことになります。水氷があったとしても非常に少ない量で土と混ざっているか、あるいは土に隠れてしまっています。実際、ルナープロスペクター衛星からの推定では、水氷はあっても数パーセントと考えられており、本観測結果と一致しています。』
という記事がその中核をなす文書と思われます。

●有名な宇宙評論家の松浦信也氏もこの件に関して述べています。

http://smatsu.air-nifty.com/lbyd/2008/10/post-b683.html

彼は、月には水分を含んだ彗星核が何億年もの間降り注いできたのだから、水分はあるはずだとお考えのようです。しかし、今回は計測できなかったということで、大量の水分はないか、掘ってみなければ確認できないようだと結論づけています。
そして、『無人探査で十分に調べてから、しかる後に「さあ、本当に人が行くべきか」と考えるべきなのである。』と述べています。しかし、これは間違いで、本当は無くても出かけてゆくのが本当の探査では無いかと私は思います。

私は日本が有人探査をしないのはなぜなのか、まだよくわかりません。おそらく米国から禁止されているとか、お金がかかりすぎる、技術的に問題がある、人名を尊重する、というような複合的な要素があるのではないかと考えられます。

いずれ日本も、有人宇宙探査をしなければならないと思いますが、現状のままでは中国に一歩も二歩も遅れをとってしまいます。なんとか早めに手を打ってほしいと考えるものです。

また、月の極地だけでなく、月の裏側の全域に関してのSP画像の公開を望むものです。

植木淳一

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