2009年3月17日火曜日

●日本の月有人探査計画に思う

日本の月への有人飛行ですが、すごいですね。

http://mainichi.jp/select/science/news/20090306ddm001040029000c.html

日本もついにこうした計画を立てるのかと感動する一方で、米国の計画に参加して、日本人宇宙飛行士が米国の宇宙船に便乗して月へ行くのだという話しもあるようです。後者では、宇宙飛行士をそろえればよいだけの話でしょうか。

そうでなくて、日本が独力でこの開発をするようだと、また大変なようです。
現在、日本最大のロケットHーIIBだと16tくらいの衛星を低軌道に打ち上げられます。おそらく、これを使うようになるのでしょう。アポロ宇宙船の場合には、サターンロケットを使用しました。重量2300t。高さ110.9mと言うものです。このサターンロケットの推力が2500t重ですが、ものすごいものですね。

現在、日本の分担している「国際宇宙ステーション」(ISS)へ荷物を運搬するためのHTV(約16t:160億円)は、H-IIBロケットを使用することで打ち上げられることになっています。このHTVを、人間が乗れるように改造して、H-IIBと「HTV改造型宇宙船」の組み合わせにより宇宙飛行士を低軌道に上げることが考えられます。
おそらくこの方法が、もっとも開発労力が少なく容易な方法で需要もあり、日本の有人宇宙船候補としてはトップで採用される可能性が高いと考えられます。

しかし一部にHーIIに関して危険視する声があるようで、どうやら燃料の輸送ポンプ系の圧力が非常に高いことが難点であるらしいですね。これは有人飛行に関しての危険度という意味です。
しかし、HーIIロケットは「かぐや」まで打ち上げ、やっと順調な上り坂にきたロケットなので、今後も捨てることはないでしょう。大型の無人衛星はこれで十分打ち上げられます。

ところで、そのH-IIBの打ち上げ限界より大きなものはどうするのかという疑問がでてくると思います。それは、一言で言うと「モジュール化」し「分割して」打ち上げるのです。そして、軌道上でそれら複数のモジュールをドッキング(結合)して組み上げるのです。こうすれば、いくらでも大きな宇宙船が軌道上に上げられます。
それで、将来はこの軌道上でのランデブー(接近)とドッキング(接続)技術が必要とされます。
また、この方法では打ち上げ用のロケットが複数必要となります。それだけ費用がかかるわけです。しかし、新たなロケットを開発するとなると、その開発費用だけで数千億円もかかり、また数年~十年以上もの開発期間が必要とされます。(LNGロケットの開発にはすでに8000億円がかかったという。)また開発に成功するかどうかもわかりません。ところが既存の成功したロケットを使用すると、開発期間も必要なく簡単に打ち上げられるのです。

この方法を採用すると、開発費や開発期間、労力が最低限に抑えられ、将来の拡張性も最大となるはずです。

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______日本_________米 国_______欧州___________ロシア
MV_____H-II_____デルタIII____アリアンIV______プロトン
85億円___190億円___90億円_______108~132億円____43~67億円
1.8t_____10t______8.3t________9.6t_(18t ⅴ)___21t
(低軌道への打ち上げ能力)
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さて、安全性というと純国産技術を使用した固体燃料ロケットです。これは設計からすべて日本人の手でつくれるので、たぶん開発はお手のものでしょう。早く確実に製作できると考えられます。

ところで製作費ですが、MVロケットを基準として類推すると、MVは高度250kmくらいの低軌道に1.8tの衛星を打ち上げられます。
人間を搭載するには、10tの重量を低軌道に打ち上げることを想定すると、MV6本分の推力が必要となります。(1.8t×6=10.8t)。これを実施するには、単にロケットを6本束ねるか、6個分の推力をもつロケット(仮にNVと命名する)を製作しなければならないでしょう。いずれにしてもMV6本分くらいの制作費がかかると仮定します。つまりNV一本の制作費は85(億円)×6=510(億円)くらいになると考えられます。こうしてみると、有人宇宙船用のロケットNV一本分の値段はえらく高いものです。

しかし、このNVロケットは、人間を低軌道に乗せてまた帰還させるISSへの「はしけ」としての単純な機能のみでよいと考えると、すべて同じ仕様で製作できます。そのために同じロケットを「大量」に注文・生産が可能です。たとえば同一仕様のロケットを20本(あるいは50本)くらいをまとめて注文すると、一本あたりの製造費は当初のコストの1/4である130-150億円くらいになるという甘い期待をしたいです。こうなれば、なんとか国際的にも見て妥当な水準となるわけです。こういう案はどうでしょうか。

このような「はしけ」的な有人宇宙船はISSのみならず、衛星のメンテナンスとか、さまざまな軌道上での実験や作業に必要なので、長期的な未来にわたって需要は多いと考えられます。たとえば、気象衛星のメンテナンスとか、通信衛星、スパイ衛星や科学衛星などの保守管理です。

月への有人飛行は、このNVで宇宙飛行士を先に軌道上へ打ち上げ、後からH-IIBで打ち上げた月宇宙船へ軌道上で乗り移って行います。必要とあれば、H-IIBを二本用いて月着陸船と月面探査車のモジュール、月軌道船や司令船を兼ねたモジュールを別々に打ち上げ、軌道上でドッキングさせるのです。少々宇宙船が大きくなっても、このやり方でOKです。つまり、いくつかのモジュールに分割して軌道上へ別々のロケットで打ち上げ、軌道上で組み立てるのです。火星有人探査船もこのやり方で可能となるかもしれません。外惑星や太陽系外への探査船も打ち上げ可能です。大きな宇宙ステーションも同様の方法で作成できます。

米国の民間会社の「スペースワン」は一機20億円だそうですね。
しかし、なんとかもっと安価な方法で宇宙旅行を楽しみたいものですね。月や他の惑星、遠方の宇宙へも「ジャンボジェット機」並みの手軽な価格と、簡単な服装で旅行する日が来ることを期待したいものです。

植木淳一

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