
何気なく手にとってページをめくってみると、コイルとか電線が巻きついた実験装置の写真が目に留まりました。その近くのページには、埼玉県春日部市での浮上した実験例が書かれていて、衝撃を受け、早速それを買い込んで一気に読んだのです。なにしろ清家新一氏は東京大学の物理学課のマスターコースを出ている秀才です。絶対一読の価値はあると考えたのでした。
そのとき私は某大学の工学部の大学一年生で教養課程に通っていたのです。そのために、物理学の難しい公式が並ぶ理論説明に戸惑いました。しかし、実験装置はかなり具体的に書かれていたので、装置を作ろうと思えば作れるような気がしたのです。
早速、清家氏の機関紙を買い入れましたが、装置部品の販売価格がかなり高いので(貧乏学生が購入できる金額ではなかったし、高電圧高周波発信器の制作にも困難があった)二の足を踏んだのです。
友人に相談すると、早速、秋葉原に出かけて部品集めをしようと彼は提案したのです。しかし「球形コンデンサー」がなかったのが敗因で、同書籍を精読すると、どうも嘘があるらしいということになり中座したのです。(この「球形コンデンサー」は当時、出来たものを清家氏の「重力研究所」から買うか、自作するしかないしろ物でした。現在では東急ハンズとかDIYショップで、これに使用できる金属球が入手できる。)
さらに、教養課程の物理の先生に同書籍を見せて批評を伺ったところ、一週間して書籍を返しながらその講師は言ったのです。「この本の作者は、書き方からみて、あまりまともなものではないと思うよ。それより、私の「宇宙セン研究室」に遊びに来ないか!?」と誘ってくれたのです。(彼の研究室は「宇宙線{宇宙からの放射能}研究室」で「宇宙船研究室」ではない)
さて、実験装置製作は高くつくし、どうやら清家氏の実験装置では浮上しないようだし、現代物理学からみると理論的にも駄目のようなので、私もそれ以上の追及をやめ、彼の機関紙も購読をやめたのです。そしてひとつ気になった事、つまり清家氏が手本にした参考書が「ジョージ・アダムスキー」氏の体験本でした。それを購入して読んでいて、久保田八郎氏が主催している日本GAPのことを知ったのです。
久保田八郎氏は、ジョージ・アダムスキー氏から、日本での彼に関する情報の流布一切を任されている人でしたので、ここに入っていれば更なる情報が手に入るのではないかと考えたのです。こちらは特に変なことはなく、むしろ誠実さが感じられる機関紙をだしていたのです。しかし、重力制御に関しては、ほとんどと言ってよいほど記事(情報)にお目にかかれませんでした。
そして、数日後に彼はガラス張りの1.2mもの高さのあるボックスを作りあげました。それは、線香立てを下に入れると、線香の煙が周囲の風の影響なしに観察ができる優れものでした。また上面にもガラス板が嵌めてあり、上から線香の煙を観察できるのでした。以後、中学時代からの友人三人で、その装置を用いて線香の煙を心行くまで観察したのです。
すると、ある発見がありました。なんとその装置では、線香の煙が全くよどみなく真っ直ぐに上がり、上のガラス板に当たるのです。こうした装置を高くして、風の影響がないとどこまでも線香の煙は上がって行くかもしれません。こんなものがあるのかという素晴らしさでした。おまけに、上のガラス板から、線香の煙の横断面図が見えたのです。(これがどのようなものであったのかは秘密にしておきます。ただ台風の目の構造に似ているとは言えます。)
とにかく、線香の煙は煙突からの煙とは違い、その元から上面のガラスに打ち当たるまで、同じ太さと丸い形状を崩さずに上ってゆくのです。周囲からの風の影響がなければきっとどこまでも登ってゆくに違いありません。学生時代には、これだけでも驚異的なことでした。(しかし、ただそれだけの事でしかないのでした。)
結局、学生時代に何ということもなく清家氏の書籍の探求は終わってしまいました。
その後、二十年もしてから、彼の装置では0.1gくらいの重量変化があるらしいとテレビでやっているのを目にしました。
まあとにかく、重力が制御できたとして、宇宙船が空中に電磁気力で浮かんでいったとしても、その後、宇宙空間に出てからどのように飛行するのかが問題となります。宇宙空間に空気はないので、プロペラなどでは推進できない。やはり反動推進のロケット噴射のたぐいが必要となるわけです。
(現在では、電磁石を利用した「磁気トルカー」なる地球の磁気を利用した人工衛星の姿勢制御や軌道の変化を行える装置が考案され使用されています。できればそれよりもっと強力な推進装置が必要なのです。)
つまり重力制御はロケット以外の推進装置による宇宙旅行の第一歩でしかないのです・・・。これは、ロケットに代わる推進力が得られるのではないかと探求した、今から考えると夢のような時代のお話でした。
人は自然界から学ぶとよく言われます。つまり鳥や昆虫が飛ぶのを見て、飛行機やヘリコプターが制作されたと考えられるわけです。確かに構造や飛ぶ原理は同じです。最近ではジャンボジェット機のように、400トンもの重量物が超音速で世界の空を飛び回っています。だから重力制御に関しても、自然界にその原理で浮かぶ物があればよいわけです・・・が、どうでしょうか。
近年、NASAが火星から飛んできた隕石の話題を出しましたが、そういうことはあるかもしれません。しかしそれでも、火星の重力が異変を起こして、隕石として火星の石が飛んできたのかどうかはわかりません。むしろ火星の火山爆発などの強力なエネルギーにより飛んできた可能性の方が高いでしょう。いずれにしても、地球まで飛んできたのが本当ならすごいことですが、その原因や仕組などはよくわかっていません。
さて、春の明るい日差しのなかで、室内のホコリの粒子はふわふわと空中を漂っているのが見えます。こうしたホコリの粒子は、集めて固めると、樹木とか重いプラスチックの塊や金属である場合もあるのです。そうした様々なものが、一様に空中に浮かんで漂っていることは何か不思議な印象があります。よく、タンポポの羽毛がふわふわと空中を飛ぶのを見ますが、これも似たような原理なのかも知れません。
また、人工衛星から見ると、地球の周囲の宇宙空間にナトリウム・イオンの雲が漂っているらしいのです。また、月周辺にもナトリウムの雲があることがわかっています。(その他の原子イオンの雲もある)。なぜそんなところにナトリウム・イオン雲が広がっているのかという説明はまだ聞いたことがないのです。おそらく、ナトリウム原子は軽いから、というのが答えかもしれません。
地球の場合には、広い海の中に「塩化ナトリウム(一般に口にする塩)」が豊富に存在しています。塩化ナトリウムは塩素原子とナトリウム原子が結び付いたもので、食卓で口にする「塩」のことです。この塩の入った海水が、波や風により水飛沫として空中に放散し、そのまま空中で乾燥すると塩素イオンとナトリウム・イオンになります。このナトリウム・イオンが対流や拡散により上昇して大気圏外へ登っていったのでしょう。
それにしても、若い頃の疑問や探求は、一生その人の思考方向を左右する場合があります。どうぞお気をつけて人生を歩み、楽しんでください。
植木淳一
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