2011年5月15日日曜日

【温故知新】歴史の散策をしてみよう。

古代人の書いたものを読むと、時々、”はっとする”ような記述に出食わすことがある。
以下の記事が、そのひとつである。

古代の歴史家ヘロドトス(BC484~?)は次のように書き記している。

『これまでの本書の記述は、一般のエジプト人および祭司達の語ったところに従ったものであるが、それによって明らかになったことは、初代の王から最後に王位に就いたへパイストスの祭司に至るまで、三百四十一代を数え、その間祭司長と王とがそれぞれ世代と同じだけいたということである。ところで三世代が百年であるから、三百世代では一万年である。さらに三百世代に加わる残りの四十一世代が千三百四十年となる。かくして合計は一万一千三百四十年となるが、この間、神が人間の姿をとって現れたことは一度もないという。このことは以前のみならず後のエジプト諸王の場合にもかつてなかったというのである。
またこの期間中、太陽が四度その正常の位置より外れて昇ったという。現在の太陽の沈んでいる方向から昇ったのが二度、現在昇っている方向へ沈んだのが二度あったというのである。しかもエジプトの国内ではその際に何の異常も起こらず、陸や河からの収穫物、病や死亡に関する事柄にも異常は全くなかったという。』
「歴史」(ヘロドトス著)巻2の142より抜粋

これによると、一万千三百四十年の間に、太陽の昇る方向が四度変わったというのである。つまり、東→西が西→東、また東→西、西→東、東→西(現在)というように、四回の変化があったというように理解できる。つまり、平均すると2835年に一度、変化が起きたことになる。しかし、ヘロドトスが生きていた時代は現在と同じ太陽の運行であったから、それから今まで少なくとも2480年間は変化が起きず同じままに時間が経過している。
このような事が起きるとは、とても考えにくい事である。しかし、古代の著述家が聞いた話として、存在していることは面白い。
ご存知のように、太陽が東から昇り西に沈むように見えるのは、地球が回転(自転)しているからである。この自転による角運動量はかなりな大きさであり、逆転させることは難しい。また既知の天体に作用している力で、それを起こすことは無理であろうと思われる。そうなると、他の出来事が起きる必要がある。つまり、地球の形が変わるなどして、地球の回転モーメントの分布が変わり、回転軸が変化することである。また別の考え方として、内部の「核」で生じている地磁気が逆転することで、地殻にある残留磁気と反発力や吸引力が生じ、逆転力を生むようなことだろう。そして表面がずるっと動いて、地表の南極と北極が逆さまになった、というような変化である。

最近では「プレート・テクトニクス」なる言葉が知られるようになってきた。つまり、地表にはいくつかのプレート(厚さ数十キロの地殻が板状になって浮かんでいるという)があり、それが地下のマントルの対流に引きずられて動いているという。また、日本で地震が多発するのは、そのプレート同士がぶつかり合って沈み込む部分で、摩擦とストレスの発散により生じるという。
さらに、近年の地震波の研究からわかったことであるが、地下2900km(地表から半径の45%位)以下には、高温高圧で金属が溶融した「核」があるという。つまり、われわれの立っている地面は、そうした流動的なものの上に乗って存在しているわけである

しかしヘロドトスの記述では、そうした変化でも(少なくともエジプトでは)日常的な生活上で、全く何の異常も見られなかったという。そうだとすると、これはかなりゆっくりとした変化ではないかと推測されるのです。また、急な加速もないということなのだろう。

考えてみると、われわれの乗っている宇宙船「地球号」は、赤道上では時速1670km(マッハ1.4:音速の1.4倍)という速度で回転している。また、太陽の周りを時速十万七千キロ(秒速29.78km)つまり、マッハ【89.8】という、とてつもない速度で動いている。しかし、われわれはそうした運動を全く感じないで日常生活を送り続けているのである。

そのことを考えてみると、うまくすれば人間界では全く何の問題も起きずに、上記の変化が進んでゆくことは想像に難くない。

つまり、われわれはその事に関して何も考えないでよいのかもしれないが、われわれは原始人で無いから、一応、どのような変化が生じるのか天文学者達に気をつけてもらおう、と考えるのである。

それよりも、地球温暖化による気候変動が食物の不作とか異常気象を起こして、様々な災害をもたらすことを心配したほうが良さそうである。また、大地震などもある。さらには、そうした様々な異変などの情報によるパニックを起こさないよう気をつけることも重要だと思われる。

必需品の供給などは、自分たちが居住する地域で、ある程度自給自足できることが望ましい。また余剰分を他の地域へ回したり備蓄するなどの心がけも必要だろう。こうした非常時の防災と、日常の倹約との兼ね合いをどうするのか、議論が必要かもしれない。そして、ここで「中庸の徳」という言葉が持ち出されるかもしれない。人類はこれまで様々な英知を蓄えてきた。だから今後は、それらの英知をうまく活用して、人類の利益のために応用してゆくべきではないかと思うのである。

植木淳一

1 件のコメント:

Unknown さんのコメント...

補足説明
問題なのは、この記述のなかで、地磁気が逆転すると地殻部分がそれにより移動する(回転変移する)という理論部分です。
これは、地表近くやマントル中にある強磁性鉱物などによる残留磁場により、元の磁極への親和性が現れるという考え方です。つまり、北極近くの残留磁気成分(固定されている)はS極に親和性があり、新たにできた北極のN極に反発し、新たにできたS極(南極)に引かれます。また南極のS極志向の残留磁気成分(固定)は、新たに出来た北極のN極へと引かれます。このように、地表は地球磁極のN極とS極に追従して動きを共にするという考え方です。
これが真実かどうかはわかりませんが、この理論道りだとすると、地表面から見て磁極の強度は変化しますが、方向変化はほとんどないわけです。相変わらず磁石は元のS極を指し、その地理上の方向は昔と変わりません。

それでは、かつて日本の松山博士が発見した、地磁気の逆転現象はどのように説明できるのでしょうか。
これには、地球内部の磁気成分の変化が関係してきます。もしも、逆転してできた新たな磁場が弱い場合には、この変化が顕著に現れずに、動きがないか中途半端となります。そうしているうちに、地殻変動か何かで地球の回転モーメントが増大して磁極間の力を超えてしまった場合などは、それ以後、内部磁場が増大しても、地球表面が動かないという場合が考えられます。

最近では地球の磁気が弱まっていて、2000年前のイエスの時代の半分以下になっています。いずれはゼロになり、逆転をおこすのではないかという話もあります。

このような、過去の伝承が真実であったケースは、トロイの城を発見したシュリーマンの話を持ち出すまでも無いでしょう。一応、検討する余地はあると思うのです。

植木淳一